くろみつの隅の囁き

文化系全般を勉強中。2〜3次元までミーハー気質。又吉ごととか。

職業の枠にとらわれないかっこ良さ。星野源×又吉直樹「働く男」巻末対談

 

星野源さんが以前執筆した「働く男」の文庫版が9月2日に発売された。

文庫化に当たって加筆された他、巻末に又吉と星野源の「働く男」同士の対談が

あると知り、なんて素敵な対談、と楽しみにしていた。

(以前「おやすみ日本 眠いいね」で共演していた時もかなり嬉しかった)

 

実際文庫本見開き10ページ少々の対談だけれど、すごく濃い対談だった。

特に始めの「職業の枠はいらない」の話で、やっぱり2人はそこの考え方が同じなんだな、と思ったのでまとめをば。

 

働く男 (文春文庫)

働く男 (文春文庫)

 

 

「僕は、職業はなんでもいいんです。」(又吉)

「何の仕事がメインとか肩書きとか、関係なくやりたいですよね。」(星野)

 

星野源=音楽家・俳優・文筆家

又吉直樹=お笑い芸人・作家

 

よく紹介されるのはだいたいこのような肩書き。

2人共もともとメインはお笑いだったり音楽家(あるいは俳優)だったけれど、

今は文を書く事でも活躍している「マルチタレント」っていう印象を持たれていると思う。(実際は2人とも昔から何かしら書いていたけど)

 

だから一般的には、「又吉ってお笑い芸人なのに小説もかけるらしい」とか、

星野源って俳優だと思ってたけど音楽番組出てなかった?本も出してる?」とか、

よく知らない人にはこの人は結局何者なんだろうって思われるのかもしれない。

 

実際又吉は芥川賞を受賞した直後、記者会見やテレビのインタビューでよく「芸人としての仕事はどうするんですか」「いずれは作家に専念するんですか」「芸人と作家は何%でやっていきますか」という類の質問をよくされていた。

そういうインタビューに対して又吉は、それが短くてわかりやすい回答を期待しているからか、「芸人100%で、空いた時間で執筆をこれまでもやってきたので」というような事を言っていた。

 

一方で情熱大陸や雑誌の対談など、ある程度自分の意見をゆっくり聞いてもらえる場では、又吉が特に職種に拘っているわけではない事がわかる。

 

「全然ちゃうって言われるかもしれないですけど、僕小説書くのは、芸人の職業にめちゃめちゃ近いと思うんですよね。小説って結局頭の中にある事なんでネタとか作るのと一緒で、もともとの「考えるの好き」っていう、その変なこととか、でいうとめっちゃ近いねんけどなっていう。」(情熱大陸

 

「コントと漫才ってラグビーとサッカーぐらい競技違うじゃないですか。そこよう同じ人たちがやってるなっていうくらい違うじゃないけすか。でいうと、小説はアメフトくらいじゃないですかね。(情熱大陸

 

 

何故2人は職種に拘らないのかをこの対談を読みながら考えていた。

この本のタイトルでもある「働く男」でイメージするのは、仕事を極めている人。

昔の価値観で言うと、それは職人さんのような、同じ1つの仕事を、それしか考えないくらいの意気込みで何十年もやり続けてきた人の事のように思う。

もうその職種が自分のアイデンティティになっているような。

 

でも2人はそこに軸を置いてはいないんだなと思った。

つまり職種に軸を置くのではなく、「自分の好きな事・したい事」を極めていたら、

それが評価されてお金を対価としてもらうようになったから、そのしたい事を実現する職種がずっと何でなければならないとか、そういう括りがないのかもしれない。

 

自分のしたい事がそのまま職業になったらええのにと前から思っていました。」(又吉)

 

「俺も、好きな音楽がお金になると思っていなかったので、いつの間にかアルバムを出してまとまったお金がはいるようになって。」(星野)

 

お金が発生すると難しくなる部分も増えるけれど、だからこそ良い物を追求していく事を日々考えている。自分の好きなこと・やりたいことを仕事にしているから、その方法が文を書く・役を演じる・コントや漫才で人を笑わせる・音楽を人に届ける、でもなんでもいいんだなって。

 

どの職業が稼げるとか、この職業だと金にならないとか、そういう話はよく耳にする。

又吉と星野源はその自分の好きなことで生計を立てられている人で、そういう「成功している人」の影に多くの、それこそ「火花」に出てくるような「道半ばで踏ん切りをつける人」が大勢いるのも事実だと思う。

でも、自分はそういう選ばれた人間じゃないから、稼げる仕事を探して生計を立てていこうとか、この仕事、この職種しか道はない、という生き方よりは、例えそれが2人のように生計を立てている仕事になっている物ではないにせよ、やりたいことを正直に追求していく姿勢を大切にできる人になりたいと思った。

なかなか出来てはいないけれど(笑)

 

あとは、その職業に括られない生き方って、実は本田圭祐とも通じるなって最近特に思う。私の芸能人の好みはやはり基本文化系なんだな、と昔思っていたけど、ではなんで私はサッカーのファンというわけでもないのに本田圭祐が好きなんだろう?と思っていた。でもこの対談や、今月のNumberの本田のインタビューを読んでも思った。

又吉と本田って絶対似てる(部分がある)。今度Numberをもう1度読み返してその辺りもしっかり考えてみよう。

 

そしてその前に、星野源さんのこれまでの作品も読んだり、観たりしたい。