くろみつの隅の囁き

文化系全般を勉強中。2〜3次元までミーハー気質。又吉ごととか。

芥川賞受賞後のストレスで又吉が死ぬんじゃないかと心配する西加奈子さんについて。

又吉が経済について学んでいくNHK(Eテレ)の「オイコノミア」。毎回身近なテーマが取り上げられていて面白いので、又吉がレギュラーである事も含め私は毎週楽しみにしている。ゲストも個人的にいいなあと思っていた人がよく呼ばれるし、番組の雰囲気もお洒落で素敵。

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そして先日、「祝受賞!文学ノ経済学」「どう決まる?本の"価格"」というテーマで2週に渡り、西加奈子さんがゲストとして出演された。芥川賞作家×直木賞作家×経済学者。

内容としては芥川賞を経済的に分析したり、「火花」や「サラバ!」を経済学的視点で考えたり、本の価格について勉強したり。やはり経済学に詳しくない私でも理解できるようなとっつきやすさで面白かった。ただ今回この2週を通して一番印象深かったのは、西さんと又吉の関係性であり、西さんの又吉への愛情?なんだか母親みたいな優しさをひしひしと感じたことだった。という事で、経済学的に勉強になったという事より、この2週での又吉と西さんのほのぼのしたやり取りの印象深かった話と個人的お気に入り場面のまとめをば。

 

 

●「サラバ!」に登場する主人公の友達「須玖」のモデルは又吉

大竹先生:又吉さんを思い起こさせる登場人物がいたんですよ。
 
"須玖はサッカーがうまいし、背は低くてもハンサムだ。なのにまるでその場にいない者のように気配を消すことがよくあった"
 
"本読んでたらなんやろう、この世の中にこんな世界があるんか、て驚いて。家の中で本開いてるだけやのに、一気に別の世界にいけるやん。"
 
"自分から積極的に何かを言うことはなかったが、誰かがふざけた後の須玖の一言は、ハッとするくらいセンスがあって、爆発的に面白かった。もちろん、学年中の皆が、須玖を慕った"
西加奈子著「サラバ!」より抜粋)
 上記の抜粋した部分について、又吉がモデルではないかという大竹先生の問いかけに対して、「そうですね。又吉さんを思って書きました。」と認める西さん。
西:インタビューとかでも何人かに又吉さんですか?と発売した直後に言われたことがあって、全部濁してたんですけど。私色んなところで又吉さんのお名前をお借りしてるから、ここでも言ったら「またのっかるんかい!」と思われるの嫌やなと思ってぼかしてたんですけど。発売した後で(もう今は)時間経ったから言っていいかな〜と思って。もうほんとにそうですね。
それに対して本人の反応は…
又吉:でも、なんていうんすかね。例えば太宰の「人間失格」読んで、大庭葉蔵を見て「これは俺や」って思うような僕で。で、別に西さんとお会いする前に(西さんが)書いた本でも、ほんまは甘めの珈琲のみたいけどかっこつけて苦めの珈琲飲んでる、みたいな描写があって、「これは俺や」と思ったりして。人物を描いていくと、なんかそういう風に見える時はあるのかなと。だから西さんに(自分がモデルだと)言ってもらって「そうなんですか?」とは思いましたけど。僕じゃない人も須玖を読んで「これ俺みたいやな」と思ってる人もいっぱいいると思うんですよね。

自分がモデルだっていう事実を固められてしまう事で、須玖に共感して、「これは自分の事だ」と感じた読者が、それを否定された気分になる事を考慮したのかな、と個人的には思った。 西さんの又吉への配慮も、又吉の読者への配慮も、優しさに溢れていていいなーと。

 

 ●又吉が受賞後の騒動のストレスで早死するのではないかと心配する西さん

natalie.mu

芥川賞受賞者と候補者の平均寿命(男性)は、受賞者が74.1歳に対して候補者は68.4歳。5年以上も寿命が異なるらしい。受賞と寿命の関係について、大竹先生の「成功者の又吉さん、いかがですかね」という問いかけに、「僕成功者のイメージあります?」と返す又吉。

西:でも又吉さん受賞して、その後の騒動のストレスで死にそうって思ってます私。(賞を)取って戴いて嬉しいけど、「もう黙っとったって!」と思いますなんか。 

 と又吉を心配する西さん。…そう。確かに騒がれすぎて心配になるっていうのは、芸人としての又吉をずっと応援している人とかは、結構同じように思っている人多いんじゃないかなと。更にこの芥川賞の平均寿命のデータに関して、

西:こんなに注目された受賞者っていないからほんとこれ(平均寿命)を下げるよね。
又吉・大竹先生:(笑)
西:いや、不吉なことじゃなくて!はよ死んでという意味じゃなくて(笑)

●又吉にお金が入っているのは日本中にバレてるから、変な人に貸してしまわないか心配する西さん

西:"変な人が来て「貸して」って言ったら貸しちゃいそう。早くにもう貸せないような、なんかお金を使っといてほしいなっていうのはちょっと思ってたんですけど。不動産でもなんでもいいけど、「ごめん貸せない」って物理的に貸せない状態にしないと、きっと又吉さんって、貸しちゃったりあげちゃったりするから。
又吉:いやでも、考えようと思ってますちゃんと。ハイ。
大竹:もう番組で住宅の買い方の話もやったんです。だからもう準備万端なんです。西:あ、ほんとですか。なんでもいいのでね。欲しくなかったらあれやけど、とにかくあげちゃうのだけは、と思って。
大竹:そうですよね。本当に望んで一番やりたいことにそれを使って欲しいですよね又吉:はい。
西:そうですよね、ほんとにそう思います。
又吉:そうします。オイコノミアでも色々学んできたんで。それを活かして。
3人:笑"

 …お母さんのような優しさ。

●西さんが「火花」を読んで感じたこと。

大竹:西さんは又吉さんの火花を読まれて小説家としてどういう風にお感じになられました?
西:もうほんとに読者として感動しました。こんな美しい…なんか本当に、作家やし、又吉さんの事を存じ上げてるから作家として読むのは嫌やなと思っていたけど、そんな心配は無用というか。本当にのめり込んだし。読者としてずっと、ずっと楽しかったです。楽しかったし泣いたし。「アホで優しくて強くて美しい」っていう。その感じが又吉さんそのものやなって思いました。全力でアホをやるってこんなに優しくて美しいんやなっていうことを、又吉さんはお会いする時もお会いできない時も体現されてる方やから。だからこの「火花」を書いたっていう事も私はおっきいボケやと思ってて、なんか「傑作書けんのかい!」みたいな。それがなんか「芥川賞取るんかい!」っていう大ボケを決めたような気がします。ここまで皆さんを楽しませてくれる方ってお会いした事ないですね。
大竹:なるほど〜。やっぱり芸人として最大のボケであったと。
西:芸人…もう全身芸人やと思います。
大竹:なるほど。すごいですね。
又吉:嬉しいですね。
西:やから本当にパーティーとかも授賞式とかも感動するけど、泣いちゃうけど、泣きながら笑うてまうんですよ。「なに立っとんねん!」みたいな。
大竹・スタッフ:笑
西:めっちゃ嬉しいんやけど、わかる?その、すっごいなんか。それがやっぱ火花とかぶるというか。めっちゃ笑いながら泣けるってそんな幸せな読書体験とか、人間としての経験ではないじゃないですか。

 

●その他個人的お気に入りポイント

・冒頭の築地での待ち合わせで、透明なビニールに魚1匹入れて現れる西さんが可愛い。「魚買ってました。お刺身用で。」

・いつものお団子ヘアではなく長い髪を一つに束ねていて美しい。

・西さんの説明のナレーションで、「サラバ!」は又吉に触発されて書いて、その「サラバ!」を読んで又吉が「火花」書いた。だから西さんは小説家又吉の生みの親?、と紹介されているけど、西さんが又吉の影響を受けて書いたのって確か「舞台」だよね…?須玖が出てるからそう説明してるだけかな?(これはただの個人的な疑問)

・新喜楽に入って、伝統的なランマを触る2人。「木やな」「木ですね。」

・大竹先生がいつもと違うお洒落眼鏡をしている。後に又吉が尋ねると、今日のために新調しましたと。冒頭から気になっていたので触れてくれてよかった。

・又吉の知り合いが経営する出版社、として夏葉社ロケ。「昔日の客」も映ってた。

 

又吉と西さんは雑誌でもTV番組でももう何度も共演・対談されているから、帯を書いた話とか、もう知っている話も結構あるけれど。又吉の受賞に対する西さんの心配とか、

お互いを尊敬し合ってるんだなっていうのが感じられて良かった。 

 とりあえず早く「舞台」を読み終えよう。