くろみつの隅の囁き

文化系全般を勉強中。2〜3次元までミーハー気質。又吉ごととか。

作家が語り合う貴重な番組「タイプライターズ」MC:又吉×加藤シゲアキ ゲスト:羽田圭介 がやっぱり面白い。

6月26日の初回放送から早3ヶ月。

単発番組だったけれど、初回の番組の最後で「第二弾があれば」という話をされていたので、これは是非第2弾をやって欲しい!と思っていた。3ヶ月で願いが叶って嬉しい。この番組は、芸人で作家の又吉直樹と、アイドルで作家の加藤シゲアキ(NEWS)の2人がMCとなって、ゲストの作家さんと作品等についてトークするバラエティ。

前回のゲストは今年「武道館」というアイドルの小説を出版された朝井リョウさん。 3人とも兼業作家(朝井さんは最近まで学生作家→サラリーマン作家)であり、更に朝井さんの最新作は女性アイドルが主人公の小説とあって、アイドルをやっている作家と、アイドルを書いた作家、そしてアイドルではないが芸能界を生きる作家のトークであり、物凄く内容が濃くて面白かった。

そして今回は羽田圭介さん。「火花」と共に「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を受賞された方。作家MC2人ならではの羽田さんとのトークも多くあり、ロケもほのぼのしていて面白かったので、個人的にいいなと感じた箇所のまとめをば。 

 

"プロの作家とは書く事をやめなかったアマチュアのことである" Richard Bach

オープニングでスタイリッシュに出される名言が、毎回の対談内容を集約した言葉のようで深い。今回で言うと3人は、芥川賞は受賞してからが大変である事、本を出し続ける事の大切さについて語っている。 

羽田:作家って新人よりベテランの方が1回売れないデータを作るとやばい。書店に置かれないと実績も作れないので負のスパイラル

羽田さんはバラエティ等で、本の売上等に対する正直な発言をすることで笑いと取っているけれど、実際本が売れ続けることってすごく大事だし、どの作家にとってもこのスパイラルと戦わなくてはいけないんだから、作家ってすごい職業だと思う。 

 又吉:芥川賞を受賞してウケにくくなった。今までは変な事を言って、「変な事言ってんじゃねーよ」だったのが、皆一瞬考える、「これはどっちだ…?」と。

 だからこそ今は特に、隣に格差キャラとしてボケつつ今まで通り又吉にツッコミもできる綾部が必要なんだよ、と思ってしまう私のピース脳(笑)

加藤:普段書くときに気をつけていることはありますか?

羽田:感傷とか被害者意識には頼らないで書こうと思っています

加藤:それは具体的に…

羽田:繊細に成りすぎた心で世の中を見ると外部を敵にすることで物語を進めるって結構簡単にできてしまうので。そういうのは辞めようかなと思っています。

加藤:そうか〜。逆に簡単なやり口には頼らないようにしてるって事ですよね。

羽田:そうですね。普通のドラマとか映画ではやりにくいような混沌とした物を描きたいってなった時に、小説にしかできない事をやろうと。 

  こういう小説を書く側の視点を聞きだせる事と、物語を書く側の視点にMCが共感できる所が、MCが物を書く2人である魅力だと思う。

芥川賞を受賞し、今後について

又吉:絶対苦しい時代は来ますよ。言われますから。

・先輩受賞作家として中村文則さんからアドバイス(VTR)

中村:芥川賞受賞作をその作家の代表作にしないように、それを超えるような代表作を作るっていうのが次のステップだと思います。

向上心だけあれば作家は大丈夫だと思います。これが多分1番のポイントで、2人共それは持っているので大丈夫だと思います。

確かに、「向上心」は又吉も羽田さんも十分持っていると思うし、そうじゃないとこれまでやってこれていないだろうとも思う。

又吉:何を書いても誰かに何か言われるじゃないですか。だからあんまり気にせん方がいいですよね」

加藤:そうですよね。処女作は、他人より面白いとか、好きとか面白くないとか言われるじゃないですか。 そこからって自分の作品と比べられていくんですよね。

前作の方が面白いとか、超えたとか。過去のあれより面白いとか、そういう風になっていく事も多いんで。過去の自分が敵になっていくのって「超えたい」っていうかなりの向上心が必要だなって。

又吉:そうですよね。

 「処女作以降は自分(の過去作)も大きな敵になる」っていう言葉に、羽田さんも大きく頷いていたのが印象的だった。勿論又吉はこれからがそういう意味で大変になるだろうし、他2人は既に複数小説を出しているから、本当にそこが作家さんにとって苦労する所なんだろうなと。

 

 ●作家3人の商店街ロケ

サイン本は版元に返品できないので書店でサイン本を書かせてもらうという発言から。

お肉屋さんを発見し、何か食べる空気になったけれど、撮影前にお弁当を2個完食しお腹空いてないと正直に言ってしまう羽田さん(笑)

加藤:こういう所のメンチカツとかめっちゃうまいっすよね

又吉:コロッケもありますよ

又吉・加藤:どうすか羽田さん(笑)

羽田:じゃ、食べます。

加藤:もし良かったらロケ交渉を…

でも結局まったりした2人におされ食べる事になり、ロケ交渉もした流れが面白かった。その後書店でサイン本を3人で協力して書いていたり、売れる分だけ書いて下さいと実際店長さんに言われている場面も。

 

・新宿の「池林房」にて

羽田さん憧れの作家椎名誠さんの行きつけの居酒屋へ。椎名誠さんの旅エッセイを読み作家に憧れた話。これは別番組でも話していた。

鳥ハムを作るという羽田さんに、同じく鳥ハムを作るという加藤さん。それを聞いて

羽田:え、鳥ハムフレンドみたいな感じ…

加藤:やっぱり辿りつきますよね。

又吉:鳥ハムっていうのもあんまわかんないです。何をおっしゃっているのか…

と言い、鳥ハムあります?と店主に聞く又吉と、研究しますと返す店主さん。ここも面白かった(笑) ちなみに映像は出ていなかったけど次のコーナー前に、羽田さんがウイスキーを注文していて、笑いが起こっているのが聞こえた。

・何故合理的な性格の人が小説を書いているのかと読者に問われた話から…

羽田:小説って、役に立つとか立たない、とかから外れた所にある価値観とかを提示していく事が、まあ結構小説の強みだと思うんですよね。

「役に立つ・立たない」と「合理的」な事は、似てるけど違う。

あとは、既婚者の女性と飲むのは無駄で、一番合理的なのはいやらしい女と飲むという羽田さんに対して、「うちの相方と全く一緒っすね」と綾部の事を話題に出していて嬉しかった。そして、受賞後の目標としては、書店に本を置き続けてもらう事だと言う羽田さんと、もともと本自体が好きだからこそ、毎年本を出してきたので、それを持続したいという又吉。ここでは芥川賞受賞後の話だったから2人の目標のみだったけれど、加藤さん自身、処女作の「ピンクとグレー」の出版以来毎年ちゃんと本を出し続けているし、今回の「大切な事は本を書き続ける事」っていうテーマ的にも加藤さんのその辺りの話ももう少し聞きたかった。

・収録を終えて…

「いつか作家さんと我々で、泊まりでキャンプに…」とおずおずと話す又吉。

テント張って焚き火しながら本の話するとか…」という提案。

そんなの私もやってみたい←

そして前回の朝井さんとの対談の流れから継続して、第3弾が無かった場合ゲストの羽田さんのせいになるよっていう話(笑)

もし第3弾あるとすれば誰かな?これまでの所MC2人と年齢的に近い方が来ているから、20〜30代で2人と色々話せそうな人だとすると…やっぱり西加奈子さんかな(笑)もう又吉とは雑誌でも番組でも対談しまくってはいるけど。3人だとまた面白い事になるかもしれないし。

・収録後羽田さんよりメッセージ(省略部分有り)

数年間僕の本を置いてくれていなかった啓文堂書店府中店という見慣れた風景に、今をときめく加藤さんや又吉さんの姿が重なると、時空が歪む感じでした。楽しかったです。

●全体の感想 

羽田さんは単独でも複数番組で受賞の話・プライベートの話はされているから、そろそろ本当はただ羽田さんについて語るだけでは他番組の二番、三番煎じになってしまうかもしれないと思っていた。

ただ、MCが実際に本を書いている2人なので、同じ小説家同士として引き出せる話があるのではと期待していたし、前回の朝井リョウさんとの対談がとにかく面白かったので単純に楽しみだった。

 総括としては、第二弾もやっぱり面白かった。第三弾の発表待機に入ります。

ただ個人的にはの前回の又吉×加藤×朝井対談の方が神回だった気が(笑)

というのも、羽田さん初見の視聴者を考慮してか、また芥川賞作家2人の共演だからか、芥川賞はどんな賞か、受賞の前後どうだったか等、読書好きや羽田さん好きからすればもう知っているであろう話も前半多かったので。

でも何よりこの番組が魅力的なのは、作家の語る苦悩だったり、信念について、MC2人が他人事ではないという事。どういうきっかけで作品を書いたのかという話や、どこで小説を書いているのかという事はもちろん、その作品を生み出すまでの苦悩が、同じ小説の書き手として共感できる部分が多い所とか。ゲストの意見を元に自分の実感を思う所として語れるっていうのがすごーく魅力的だと思う。

…といいつつ前々から、本業は別だったけれど小説を書き始めた2人っていう共通点からいつか又吉直樹×加藤シゲアキで対談なり共演なりしてほしいと思っていたので、それが叶ったからこそ、単純にこの番組が毎度楽しみでしょうがないんだけど…!

いつかゲストなしで2人きりのじっくりした対談も見てみたい気もする。

 ていうか、前回書いたさかなクンみたいに、又吉だけでなく加藤シゲアキさんもこの半年くらいで自分の中で好きな(尊敬する)芸能人リストに入っているので、その辺りの事も今度書きたいな〜。